省エネ法とは?対象企業の届出義務を解説 > 省エネ法の届出制度|書類・期限・届出先 > この記事
省エネ法に基づくベンチマーク制度は、業種ごとに設定されたエネルギー消費効率の目標値(ベンチマーク指標)を活用し、事業者の省エネ取組を評価する仕組みです。対象業種に該当する特定事業者は、毎年度の定期報告書においてベンチマーク指標を算定・記載し、所管省庁へ提出する義務があります。本記事では、ベンチマーク制度の概要から対象業種・達成基準、定期報告書の具体的な記載項目・記入例、提出先・提出期限、電子申請の手順、よくある記載ミスと対処法まで、実務担当者が迷わず作業を完了できるレベルで解説します。
この記事のポイント
- 省エネ法に基づくベンチマーク制度は、業種ごとに設定されたエネルギー消費効率の目標値(ベンチマーク指標)を活用し、事業者の省エネ取組を評価する仕組みです。
ベンチマーク制度の概要と法的根拠
ベンチマーク制度は、2009年度の省エネ法改正により導入された制度で、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(省エネ法)第5条に基づく判断基準の一部として位置づけられています。従来の省エネ法では、年平均1%以上のエネルギー消費原単位の改善という一律の努力目標が設定されていましたが、業種によってエネルギー消費構造や技術的な改善余地が大きく異なるため、業種別に具体的な数値目標を設定するベンチマーク制度が追加されました。
ベンチマーク指標は、各業種における「目指すべき水準」と「現状の中央値的水準」を踏まえて設定されています。事業者は自社のベンチマーク指標値を算定し、目標値(ベンチマーク目標)を達成しているか、あるいは達成に向けた改善の道筋があるかを報告します。この指標値は、経済産業省による事業者クラス分け評価制度(S・A・B・Cの4段階評価)においても重要な判断材料となります(出典:資源エネルギー庁「事業者クラス分け評価制度について」、2025年度確認)。
ベンチマーク指標の目標値を達成している事業者、または達成に向けて十分な取組を行っている事業者は、クラス分けでS評価やA評価を受ける可能性が高まります。逆に、ベンチマーク指標が目標水準から著しく乖離し、改善の取組も不十分な場合は、B評価やC評価となり、省エネ法に基づく指導・助言、さらには公表や命令の対象となるリスクがあります。
対象業種と達成基準(ベンチマーク指標一覧)
2024年度時点で、ベンチマーク制度の対象業種は産業部門・業務部門合わせて23分野に設定されています(出典:資源エネルギー庁「ベンチマーク制度の概要」2024年版)。各業種の指標の定義と目標値は告示により定められており、概ね上位10~20%の事業者が達成できる水準として設定されています。以下に主要な対象業種と目標値を示します。
| 対象業種 | ベンチマーク指標の定義 | 目標値 |
|---|---|---|
| 高炉による製鉄業 | 粗鋼量あたりエネルギー消費量 | 0.531 kl/t以下 |
| 電炉による普通鋼製造業 | 粗鋼量あたりエネルギー消費量 | 0.143 kl/t以下 |
| セメント製造業 | セメント生産量あたりエネルギー消費量 | 3,891 MJ/t以下 |
| 洋紙製造業 | 生産量あたりエネルギー消費量 | 8,532 MJ/t以下 |
| コンビニエンスストア | 店舗面積あたり一次エネルギー消費量 | 791 kWh/㎡・年以下 |
| ホテル業 | 延床面積あたり一次エネルギー消費量 | 290 MJ/㎡・年以下 |
| 百貨店 | 売場面積あたり一次エネルギー消費量 | 340 MJ/㎡・年以下 |
上記以外にも、石油精製業、石油化学系基礎製品製造業、板ガラス製造業、食品スーパー、ショッピングセンター、事務所(オフィスビル)など多くの業種が対象です。自社がベンチマーク対象に該当するかどうかは、定期報告書の記載要領に添付された「ベンチマーク対象事業の判定フロー」で確認できます。複数の事業を営む場合は、該当する業種ごとに個別にベンチマーク指標を算定する必要があります。
定期報告書におけるベンチマーク指標の記載項目と記入例
ベンチマーク指標は、省エネ法に基づく「定期報告書」の中で報告します。定期報告書は大きく「特定表」と「指定表」に分かれており、ベンチマーク関連の記載は指定表の「ベンチマーク指標に関する報告」のセクションに該当します。具体的な記載項目は以下のとおりです。
まず「対象事業の名称」欄に、該当するベンチマーク対象業種名を正確に記載します。次に「算定の基礎となるデータ」として、エネルギー消費量(原油換算kl、MJ、または電力量kWhなど業種ごとに指定された単位)と、活動量(生産量t、延床面積㎡、店舗面積㎡など)をそれぞれ記入します。そのうえで、エネルギー消費量を活動量で除した「ベンチマーク指標値」を算出して記載します。
記入例として、コンビニエンスストア事業を営む特定事業者を想定します。年間の全店舗合計一次エネルギー消費量が158,200,000 kWh、全店舗合計の売場面積が200,000 ㎡の場合、ベンチマーク指標値は158,200,000 ÷ 200,000 = 791 kWh/㎡・年となり、目標値791 kWh/㎡・年をちょうど達成していることになります。この数値と算定根拠を所定の様式に記入し、「目標達成状況」欄には「達成」を選択します。
目標未達成の場合は、「中長期計画書」との連動が重要です。中長期計画書において、ベンチマーク目標達成に向けた具体的な設備投資計画や運用改善策を記載し、達成見込み年度を明示する必要があります。報告書の「目標達成に向けた取組」欄には、LED照明への更新計画、空調設備の高効率化、エネルギー管理体制の強化など、具体的かつ定量的な改善策を記載してください。
提出先・提出期限と電子申請の手順
定期報告書の提出先は、事業者の主たる事業を所管する省庁の地方支分部局です。製造業の場合は経済産業省の各地方経済産業局、小売業・サービス業の場合は事業を所管する各省庁となります。複数の省庁にまたがる事業を営む場合は、主たるエネルギー使用事業を所管する省庁が窓口となりますが、不明な場合は最寄りの経済産業局省エネルギー対策課に問い合わせることで確認できます。
提出期限は、毎年度7月末日です。具体的には、前年度(4月1日~3月31日)のエネルギー使用状況を取りまとめ、翌年度の7月末日までに提出します。例えば、2024年度(2024年4月~2025年3月)の実績は、2025年7月31日が提出期限となります(出典:資源エネルギー庁「定期報告書・中長期計画書の提出について」、2025年度確認)。期限を過ぎると省エネ法第88条に基づく罰則(50万円以下の過料)の対象となる可能性があるため、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
電子申請は「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」を使用します。手順は以下のとおりです。まずEEGSのポータルサイト(https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/)にアクセスし、事前に取得したGビズIDでログインします。次に「定期報告書作成」メニューからExcel様式をダウンロードし、オフラインで必要事項を入力します。ベンチマーク指標に関する項目は、様式のシート「ベンチマーク」に集約されており、対象業種の選択、算定データの入力、指標値の自動計算が行われます。入力完了後、EEGSにExcelファイルをアップロードし、「提出」ボタンを押すことで電子申請が完了します。
なお、GビズIDの取得には2~3週間かかる場合があるため、初めて電子申請を行う事業者は早めにアカウント発行手続きを進めてください。また、EEGSでは提出後に「受付完了」のステータスが表示されるため、必ず画面上で受付状況を確認し、スクリーンショットを保存しておくことを推奨します。
よくある記載ミスと対処法
ベンチマーク指標の報告において、実務担当者が陥りやすい記載ミスは複数あります。ここでは頻度の高いミスとその具体的な対処法を解説します。
第一に、「対象業種の選択誤り」です。複合的な事業を営む企業では、ベンチマーク対象となる事業の範囲を誤って認識するケースが散見されます。例えば、ショッピングセンター内にホテルを併設している場合、ショッピングセンターとホテルは別のベンチマーク指標で報告する必要があります。対処法としては、告示に定められた業種定義を精読し、判定フローに従って一つずつ確認することが重要です。
第二に、「エネルギー消費量の算定範囲の誤り」です。ベンチマーク指標の算定に含めるエネルギーの範囲は業種ごとに異なります。例えば、コンビニエンスストアでは本部が一括契約している電力だけでなく、フランチャイズ加盟店が個別契約しているエネルギーも含める必要がある場合があります。算定範囲の詳細は記載要領の「算定の手引き」に明記されているため、必ず最新版を確認してください。
第三に、「活動量の単位・定義の取り違え」です。延床面積と売場面積、生
